『法華経』の最後の「普賢菩薩勧発品第二十八」を受ける経典として、天台大師智リ(ちぎ)〈538-597〉が『法華経』の結経(けっきょう)として以来、開経(かいきょう)の『無量義経』と一対(いっつい)の具経(ぐきょう)とされている。
表紙は銀地に七宝(しっぽう)つなぎ文様(もんよう)を空摺(からず)りにして、その上に蓮池(はすいけ)を描く。見返し絵は、右手に剣(けん)、左手に水瓶(すいびょう)(経文では軍持(ぐんじ)という)を持った、襲装束(かさねしょうぞく)を着した若い女房の姿を描く。これは『法華経』を守護する十(じゅう)羅刹女(らせつにょ)の中の「黒歯(こくし)」で女性信仰の波をうけて、女房姿に表わして讃嘆(さんだん)したもの。「涌出品(ゆじゅつほん)」に同図があるが、描写様式が異なるので、別の絵師の筆。彼此(ひし)ともに大和絵(やまとえ)の研究史上、注目すべき作品である。 |